【あしたの闇太郎】 闇太郎開店の日の風景
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闇太郎の開店日は実に華やかであった。
小さな店に大きな赤ちょうちん、大きな壁看板、それに大きな花輪が3本も並んだ。まるでパチンコ屋の開店風景のようで、内心ちょっとまいった。
しかし、実は、店頭に予定していた「闇」を表現する三日月の飾り窓が間に合わず、換気扇のフードの取りつけも間に合わず、冷やひやの見切り発車。更には、夕方になって暖房器具の無いことに気づいてストーブを買いに走ったり、初日の幕が開くまでは大変だったが、はでな花輪たちが全部のみ込んで見えなくしてくれた感じがする。

闇太郎は最初、僕と親友のM君の2人だけで男っぽくやっていくつもりだったが、慣れるまで前に勤めていた会社の若い女子社員2人が手伝ってくれることになった。開店日は4人で営業し、店内も華やかであった(女子のひとりは和服姿であった!)。
僕が料理のすべてを仕切り、M君が飲みもの類と伝票係を担当。女子たちはカウンターの内外で接客や洗い物。舞台は忙しくも楽しく進行していった。
前日の「予行演習」からほとんど徹夜に近い状態で本番に突入したので、僕自身は料理のことで頭がいっぱい。気恥ずかしさもあって大きな声で「いらっしゃい!」と仲々言えない。お客の顔をチョッと見るのがやっとであった。声がけは専ら女子たちに任せた。
多くのお客がじっと見つめる中で鉄板焼を料理するのは、プロ修業していない身にとっては冷や汗ものだった。おでんともつ煮込みを多めに仕込んでほとんどのお客に出したが、皆が残さず食べてくれたのがリアルにいちばん自信につながった気がする。
また、予行演習日にまぎれこんで来たお客が再び連夜で来店した時には大げさでなく希望がみえた。

無事に幕が降りるか心配もしたが、20数名の知らないお客でずい分と盛り上がった。学生や若者も来たが吉祥寺界隈の商店の主人や勤め人なども多かった。
僕たちが素人っぽく若かったせいか、「頑張れよ!」とか、「一杯のまないか」「闇太郎の名前が気にいったよ」など、お客の方から色々声をかけてくれた。
酔いと疲労と興奮の中で、「まずは5年間ぐらい、闇太郎を頑張ってみよう」とM君と展望を語り合った。
「ああ、今日から運命が変わるんだろうな」としみじみ思った。
闇太郎
Tel : 0422-21-1797
〒180-0002
東京都武蔵野市吉祥寺東町1-8-18
営業時間 : 18:00~22:00
定休日 : 日(祝日不定休)