【吉祥寺フリークス】#02 杵築大社で富士登山
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真夏のある日。武蔵境を宛なく彷徨う私の目の前に、堂々たる社が現れた。徳川松平家建立の〝杵築大社〟。その中に約140年前、山岳信仰の一派「丸嘉講」によって築かれた、標高約10mの「富士山」がある。

身元不明の鰻が生息する河口湖を渡りながら、汗が一筋首元をなぞった。暑さか緊張か。漂う畏怖の気配は、富士の溶岩石と富士五湖採掘時の土で盛られたせいだろうか。橋の先は深緑が続く。足元は険しく、たった30秒程の道程が途方もなく感じられた。山頂には富士浅間神社。命懸けの富士登山へ挑む者の安否を願ったかつての人々を想い、手を合わせた。

下りは円を描くようにもう一方の道を往く。道中「三十三度」と書かれた石碑を見つけた。三十三回登頂すると更なるご利益があるらしい。その御神徳はどれ程だろうか。鳥居を出る時、滴る汗はもう気にならなくなっていた。

杵築大社
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