【ON THE ROAD】#01 BONDO

| PEOPLE

 BONDOは、中道通りを脇にそれた先に存在する。営業は週4日のみで、リンゴ箱が積み重なって出来た小さなセレクトショップだ。
 扱う商品は全て、実際に店主の村上さんが全国各地を訪れる中で出会った一点物や、日常的に使用して気に入った生活雑貨や衣服など。店内は限られた数の商品しか置いていない。まるでアートギャラリーの様だ。例えば四万十で自給自足の生活を送りながら、木工作家として活動する荒井智哉の木工器は、ナタで制作された荒々しさと繊細な美しさを併せ持った逸品。
 「色々な場所で既に扱われている方を紹介しても、という思いもある。どちらかというと、ほとんど知られてないけれど素晴らしいものを作る人を紹介したい。最近はSNSの時代なので、数は少なくなってきたけれど、でもたまにそういう人と出会った時、その出会い自体が嬉しいし、その方の物を取り扱える喜びもとても大きい。」
 売れる売れないという商業的な価値観ではなく、心が動く素敵な体験を届けられるかどうか、それがBONDOのセレクト基準だ。

 当初はオンラインで販売をしていたが、直接手に取れる場所を、という想いで10年前に開店した。
 「狭い店で急に作家の説明なんかされたら、自分だったら怖いと思ってしまうので。興味を持ってくれた人には丁寧に、というスタンス。なので暇なんです」と笑って語る通り、吉祥寺のセレクトショップとは思えないほど店内にはゆるやかな空気が流れ、初めて訪れた人は面食らってしまうかもしれない。しかしこの時間が大切と村上さんは語る。
 「ゆっくり本を読んでぼーっとして、昔の駄菓子屋やレコード屋ってそんな感じだった。自分の心地いい空間を延長しているイメージ。」

 自身の生活の8割がインプットだと語る村上さんは、有名サードウェーブコーヒーでブランドキュレーター、家具ブランドでディレクターとしても活動している。「元々はお店が暇で、毎朝コーヒーを入れるようになって。全然豆とか詳しくないから、じゃあバリスタになろうと。」その身のこなしの軽さと、好きなものを深く追求していく姿は、冒険者であり哲学者のようだ。店内を見渡すと、そのアウトプットが形になった姿がBONDOなのだと実感する。
 BONDOの店名は造語。クラフトの象徴である「接着剤」と「人をつなぐ」という意味を込め、作り手と生活者、作り手同士が繋がっていく場所になればと思い名前を付けた。
「どうすれば幸せになれるかと考えることは、男女年齢国籍人種関係なく万人に共通だと思う。じゃあまず自分はどうしたらと考えた結果、元々生まれ持った才能やワクワクする対象に寄り添って生きることが一番大事だと思った。それが仕事になるなら一番サステナブルですよね。」
 開店から10年経ち、自身の「DNAに寄り添う」ことで、ますます店の純度が高まっている。

 商品には作家や商品に関するキャプションが一切置かれていない。自分がどんなものが好きで、どんな作家がいるかを能動的に知ること、そして実際に手に取り自由に思考すること、それがBONDOの楽しみ方であり、人生を「豊か」にするための道だ。

BONDO
Tel : 0422-67-3964
〒180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町3-3-6 Arts&Crafts1F
営業時間 : 12:00~18:00
定休日 : 火/木/金