【ON THE ROAD】#02 The Apartment

| PEOPLE

 ヨドバシ裏から少し離れた路地。個性的なショップが並ぶその中に、ひときわ目を引くイエロー。セレクトショップ、The Apartmentの入口だ。
 NY買い付けのインポートアイテムを取り扱う店内では、ヒップホップが流れ、アパレル以外にも雑貨や書籍、Made in USの玩具が雑多に並ぶ。まるでNYに暮らす友人のアパートメントを訪ねたような、生きた匂いを感じる空間だ。
 「洋服はオマケ。買い物というより、音楽や文化含めたNYのストリートカルチャーを身体全体で感じてもらえたら。」
 その思いが〝トレンドに左右されない10年先でも着られるもの〟というセレクト基準にも表れている。

 当初はアパレル店員が中心だった客層もここ数年で瞬く間に知名度が上がった。全国から、海外から、多くのストリートファンがこの店に駆けつける。ニューバランスとのコラボモデル、オリジナルアイテムの制作など、実店舗を超えた展開も目まぐるしい。それでも規模を拡大することはせず、今も店舗は開店当時の広さのままだ。
 「店をやることは、労力やコストがかかって、時代に逆行していると思う。でも、それに逆らっていかないと、僕たちの存在意義はないと思う。この規模のままキープすることだけを考えてます。」

 代表の大橋さんが友人たちと立ち上げた小さな部屋は、今年で13年を迎えた。そしてNY同様に、青春時代を過ごした〝吉祥寺〟への想いも強い。
 「地元の人たちからすると、吉祥寺は来街者の人が多くなりすぎて、もう自分たちが行けなくなってしまったような印象があって。でも街はそこに住んでいる人たちのもの。もちろん店をやっている立場からすると、お客さんが多い方が有り難いけど、やっぱり地元の人たちが、ずっと来たい街、になって行くのが理想ですね。」
 それを体現する#タグが、#吉祥寺neighborhoodだ。店舗にきてくれるお客さんに向けて、吉祥寺周辺の飲食店を紹介し続けている。
 「わざわざ広島から来てくれたお客さんも、洋服だけ買ってすぐ吉祥寺を出てしまって。それってとても勿体無いことだと思うんですよね。」
 ニューバランスとのコラボシューズを制作した際もtony’sピザ、ホープ軒という自身が好きな吉祥寺の店舗をフィーチャーし、長年の友人であるフォトグラファーに撮影をお願いした。
 「やるんだったら全部吉祥寺で。利益じゃなくて、その店にお客さんが行ってもらえるように、イメージの橋渡しをしたかった。モデルを使って大掛かりに、だと全然面白くないなと。」
 店名の由来は2つ。大橋さん自身が敬愛するポロ・ラルフローレンの本店、通称〝マンション〟の小規模版、もう1つは、いずれ友人たちとアパートを1棟丸ごと借り、それぞれの部屋で店舗を開く目標があったこと。

形は少し違うかもしれない。でも着実にThe Apartmentは吉祥寺に広がり、その輪は次第に大きくなっている。地域に根ざし、人が集い、新しいカルチャーが生まれる。繋がりを大切にすること、時代に流されないこと。それがThe Apartmentであり、on the roadなストリートカルチャーだ。

The Apartment
Tel : 0422-27-5519
〒180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-28-3-106
営業時間 : 12:00~20:00
定休日 : 不定休