【ON THE ROAD】#05 劇団影法師

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名前は知らなくても見たことがある。かげぼうしのような劇団が武蔵野市で結成45年を迎えた。
「劇団影法師」はこれまで2万回超、1000万人を超える観客に公演を行う、国内でも珍しい影絵劇団だ。活動の主軸は全国の小中学校への巡業公演。北海道から沖縄まで、団員は旅をするように全国各地の学校を巡り続ける。
影絵の枠を超え、演目は実に多彩。教科書でも馴染み深い「モチモチの木」や「スイミー」、光が透過する皮製人形を使う色彩豊かな中国影絵・ピンインシー(皮影戯)、懐かしさを感じる人形劇「三国志」、環境がテーマのミュージカルやダイナミックな「人間影絵」など50作品以上に上る。

ひとつのジャンルを超えた広がりは、これまで力を入れてきた国際活動の影響も大きい。
「日本の影絵を世界に」との思いではじめた海外公演は30ヶ国近く、アジア諸国やヨーロッパでの合作公演にも繋がった。その功績から2004年には演劇団体で初めての外務大臣表彰を受けている。授業の一環で演じられる青少年演劇。子供達に何をどう伝えるのか、一般演劇と異なる難しさがある。リサーチ含め要する制作期間は約3年。現代表の小杉さんは「子供達にいかに興味を持って貰い、文化的な体験にしてあげるかが大切。」と語る。直接子供達の目の前で演じることの重要性も大きい。
「目の前に大きなスクリーンがあって、後ろから人が出てきたり、影がぐわっと大きくなった時の迫力を体験してもらうこと、そういうライブ感が良いんじゃないかなって。」

近年では子供達が影絵に挑戦したり、描いた絵が「スイミー」の世界に登場したりと「体験型演劇」にも力を入れている。
「影絵は仕組みが簡単なので、子供達自身が太陽の下で影を作ってみたり、表現として取り組みやすいと思う。歌やダンスが上手くなくても、影絵なら出来るかもって。」
実は「影=黒一色」は日本特有のイメージ。「黒い影の中に、観ている一人一人が違う姿を投影出来るのが面白い。シルエットなら人間の身体でダチョウや象も表現できるし、大きくも小さくもなれる。」影の中に想像が宿る。そこから、教科書では得られない発想力や好奇心が育っていく。

約35年前に入団した小杉さん。今でも一番嬉しいのは子供達から直接貰う感想。
「やっぱりメディア的な活動よりも、子供達にいいものを見せたいって気持ちが強い。笑顔で喜んでくれると嬉しいし、それがモチベーションになる。」
コロナ禍で巡業公演がキャンセルとなり、苦しい時期が続いた。それでも諦めずこれからに向けて進んでいく。伸びる影法師はきっと、子供達の未来へと繋がる道になる。

劇団影法師
Tel : 0422-54-7770
〒180-0012
東京都武蔵野市緑町2-1-5
営業時間 : 10:00~19:00
定休日 : 不定休