【ON THE ROAD】#06 アニメーター 森本晃司

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普段は吉祥寺のHOME PLANETを寝城にするその姿が、この日は代官山 蔦屋書店にあった。アニメーター、森本晃司。書籍『ちょっとこわいメモ』の刊行に際し、彼が担当した挿画の展示イベントが行われ、多くのファンが駆けつけた。
40年以上に渡る活動は、他のアニメーターとは一線を画する。武蔵野市のアニメスタジオ「STUDIO 4°C」。その創立メンバーであり、積極的なオリジナル作品への挑戦と、KEN ISHIIや宇多田ヒカルなど音楽とのコラボでも知られる。強い個性は世界中で熱狂的なファンを生み、ウォシャウスキー姉妹のオファーに応えた「アニマトリックス」やNIKEのグローバルCMなど、既存メディアの枠を超え、アニメの持つ可能性を押し広げた。

始まりはブラウン管の中で繰り広げられた冒険の数々。「宇宙戦艦ヤマト」や「未来少年コナン」、「ガンバの大冒険」に衝撃を受けた。当時はネットや専門誌もない時代。和歌山の山間から記号に満ちた世界へと飛び込んだ。その後、大友克洋や押井守からの支持を得るトップアニメーターとなる。
30歳を機に演出へと転向。50歳を迎えて独立し、クリエイティブユニット「phy」を立ち上げた。節目で大きな決断をしてきたが、身のこなしは軽く、どんな変化も恐れない。
「その時『これが面白いよね』って感じた方を選びたい。もしかしたら来年は居酒屋やってるかもしれないし、どんどん自由になってる。もうめんどくさいから笑」

長年暮らす吉祥寺への想いも強い。
「ハモニカみたいな所を排除する街じゃつまんない。キレイなものだけ見るんじゃなくて、混じり合って変化していくのが楽しい。一人ではできないから、みんな持ち寄って、何か変えられたらいいなって。今までが、同じ目的に向かう仲間探しの旅だったのかもしれないね。」
「どっち選ぶって時に、普通そっちだよねって方を選びたい。『危険』て描いてあったらまず行くよね?って。」
それが自身のアニメ、そして人生においての一貫したポリシーだ。

「世の中にこんな人間が居てもいいんじゃない?って。大人ってそんなキツくないんだ、子供でいいんだ、みたいな。そういうものを作りたいなと思う。どこかでその気持ちをなくしてる人に、本当はどうなの?って。それはバカバカしくていいんですよ。つまり『うんこ』です。大人になったら言わないでしょ?小学校の時に置き忘れて。でも意外と好きなんですよ、みんな。そういうことです笑」
誰もが幼い頃に持っていたピュアな感情や視点、欲求。それをアニメという記号を借りて分かりやすく表現する。「子供になるには裸で行くしかないね。どっか解放しなきゃダメだから。でも気持ちだけね、捕まっちゃうから。」テクノのリズムで飛び跳ねる。森本晃司は今も、道なき道を駆け抜けていく。

森本晃司
アニメーター。映像作家。
1989年 『魔女の宅急便』 制作後STUDIO4℃ 設立。
『Attraction/魅力』 2011年 カンヌライオンズ 銀賞受賞。
現在は短編映画・ミュージックビデオ等作品多数。
吉祥寺在住。