【武蔵野都市伝説】File No.04 光の獣道

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黄昏時には妖怪がでるという。

昼と夜の間の井の頭公園を歩いていると、Furaさんという、ターバンをかぶってヒゲを生やしたミュージシャンが歌を歌っている。彼は井の頭公園の中に10年以上住んでいる本物のヒッピーで、僕にこんな伝説を聞かせてくれた。

井の頭公園のいせやの横の階段を登ると、吉祥寺駅に続く道がある。その道はなぜか真ん中が凹んでいる。雨水は低い所に流れ込むので、真ん中が排水溝になっているのだ。その凹みはずっと続き、吉祥寺駅を抜けたサンロードの道も、同じように真ん中が凹んでいる。
Furaさんは40年前、こんな話を聞いたらしい。

この凹んだ道は獣道で、ネズミや様々な動物が走り抜けていくそうだ。
正午、太陽の光は道の凹みをまっすぐに照らす。その時、一直線の光の獣道があらわれる。獣道は井の頭公園の南方にある、黒門という黒い鳥居からはじまる。黒門の近くには大国様が祀られている。その大国様の使いであるネズミが、大国様からミッションを受けて光の獣道を走り出す。黒門から七井橋を抜け、階段の上の道を走り、サンロードも突き抜ける。その先には、武蔵野八幡宮と鎮守の森があるのだ。古の何かを守って、この道がずっと続いていってほしいと彼は言った。

この話が事実かどうかはわからない。しかし、なんと魅力的な伝説だろう。そして真ん中が凹んだ道は、吉祥寺に今も確かに存在している。